龐鎮の船着き場を守る鬼差の達人。厳かな黒袍に身を包み、装いや風貌は、街路で戦う「斬騎」とよく似ている。傍らには常に白山派の女弟子が二人付き従い、彼の指示で動いている。武器は一対の「別離残鉤」。振るえば輪のように回転し、その技は攻守を兼ね備え、隙のない緻密な構えを誇る。特に守りから攻めを制する戦法を得意とする。
噂によれば、彼は半生にわたって門派の掟を厳格に守り、天の理は必ず正しく働くと固く信じていたという。ところが、最も大切な肉親や友人が無実の罪で投獄され、刑獄の中で非業の死を遂げた。これを機に、正道が掲げる道義や秩序など、所詮は空虚な理想論にすぎないと悟った彼は、過去を捨て、冥主の秩序に身を投じたのだった。
勾魂は行動を起こす前に必ず万全の策を練り、勝算のない勝負には決して踏み込まない。世間でいう正義と邪悪の区別には頓着せず、ただ規則に従って物事が進み、秩序が保たれることを重んじる。彼にとって、規則こそが世の公平なのだ。
だが惜しいことに、魂との戦いでは、その計算はまだ万全ではなかった。