戯夢山荘の演武場を守る「容器級」の刀人形。長身で背が高く、華やかな甲冑をまとい、白髪が冷ややかに翻る。手にするのは、龍の文様を彫り込んだ、きわめて重い長柄の偃月刀。斬り、薙ぎ、防ぎ、引き上げ、絡め、突く技を自在に使う。敵の隙を捉えれば、首元に刀を掛け、身体の周りを巡る。青い刃の光が刀と共に渦を巻き、強風となる。柄が背後を旋回したかと思うと、重い一撃が振り下ろされる。
夢差に人形にされる前の彼女は、武学の才が抜きん出ており、芝居に登場する英雄や武将に夢中だった。師は、その手に偃月刀を授けた。刀の背は天、刃は地、切先は君、柄は師である。それから彼女の生には、この刀だけがあった。腕は日ごとに上がり、やがて手合わせのできる者さえいなくなった。
夢差に人形にされた時も、さほど苦痛は感じなかった。その後も、何も大きく変わったとは思わなかった。ただ刀に倒れるものが、人から人形へ変わっただけのようだった。正道の者の怒りも、相変わらず理解できない。なぜ、残酷な殺戮だと責めるのか。怪面も同じことをしているのに、なぜ、そちらを叱る者は少ないのか。
彼らの怒りを理解する気もない。自分に勝った者だけが、理解するに値するのだから。